ステンドグラス講座 レジュメ

目次

ステンドグラスとは

ステンドグラス (英語:stained glass) は、字形の断面を持つ鉛のリムを用いて着色ガラスの小片を結合し、絵や模様を表現したもの。

Wikipediaより引用

上記のような説明が多いのですが、わかりづらいので「板ガラスを金属(鉛)でつなぎ合わせたもの」と、当工房では定義しています。

ピースごとに色が違うのは、ステンドグラス職人が色付けをしているのではなく、違う色のガラスを切りだしてパッチワークのように繋げています。(後述のシルバーステインは例外)

ステンドガラスと呼ばれているのも目にしますが、業界ではステンドグラスと呼ぶのが一般的です。

Stainedとは「汚された、染色された」という意味で、ステンドグラス制作技法の1つであるシルバーステイン(銀を使ってガラスを黄色く染めること)が名称の由来となっています。

  

よくステンドグラスと間違われるもの

グラスアート・・・透明な素材に、色のついた液体樹脂で絵を描いたもの。ガラスも金属も使わない。

ガラスモザイク。5mm~2cmほどの小さいガラス片をセメントでつなぎ合わせたもの。トルコランプが有名。

起源・教会との密接な関わり

ガラスという素材は紀元前には発見されており、雨風をしのぎながら採光も可能とする贅沢品でした。

とはいえ、ガラス製造は大変デリケートな作業で1枚の大きな板を作るのは難しいため、柔らかく加工がしやすい鉛を使ってガラス片を繋ぎ合わせ窓にはめたのがステンドグラスの起源です。

12世紀からゴシック建築が生まれると、聖書の内容を絵付けした色ガラスで聖堂内を装飾するようになり、以来、ステンドグラスは宗教芸術として発展しました。

ステンドグラスの特性

どんな光で見るのかで、作品の見え方が180度変わる

通常、私たちは反射光(=光が物体に当たって跳ね返った光)でモノを見ますが、ステンドグラスは透過光(=物体を通り抜けた光)で鑑賞します。

透明な色ガラスは手前からどれだけ強い光で照らしても、ガラスの後ろから照らす光がなければ色味はわかりません。

光の種類(自然光なのか、電気の光なのか。東向きの窓なのか、西向きの窓なのか、電球色なのか、蛍光色なのか等)、また、ステンドグラスの手前(鑑賞者側)がどれほどの明るさかによっても見え方は違います。

ステンドグラスにとって、光とはキャンバスで、ガラスは水彩絵の具のようなもの。キャンバスが黄色ければ、塗った水彩絵の具は全て黄色みのある発色になります。

以上の理由から、制作で最初に押さえるべきは「どんな光の環境下で見るのか」となります。

 

 

ガラスの性質から考える、デザインの条件

ガラスカットの実態は、切りたい形にヒビを入れて割るというものです。基本的にガラスというのはまっすぐ切れる性質があるので、直線は切りやすく、曲線は切りにくいです。

中でもハート・星・月のようなえぐれた形、ドーナツ型など真ん中をくりぬいた形は大変難しく、また仮に切れたとしても形として強くないため衝撃を与えた際にそのピースが割れやすくなります。

デザインは、現実的に切れるガラスの形や、ガラスの重さを支えられる構造なども考慮する必要があります。

 

ステンドグラスの種類

ステンドグラスの制作方法は、ケイム式・コパーテープ式の2種類があります。

①ケイム式

鉛で出来た桟(=工字型の枠・骨組み)に板ガラスを挟み、その桟の接点をはんだ付けして固定する方法。

特徴

  • ヨーロッパで発達。教会のパネルなどはこの作り方
  • 強度を出しやすいので大きい作品向き
  • 細かい曲線的デザインは難しい
  • 重くなりやすい
  • ランプ・小物など立体は難しく、2Dの作品向き

②コパーテープ式

ガラスピースを縁取るように銅のテープを巻き、銅の部分にハンダを載せてピース同士をつなぐ方法。

特徴

  • アメリカで発達。ティファニーランプが有名
  • ランプや小物など立体は9割これ
  • 細かな曲線的デザインも作りやすい
  • 大きなパネル(1m~)には不向き

 

 

ガラスピースを装飾する手段

ステンドグラス用の板ガラスはそのままでも綺麗ですが、加工してさらに装飾することもできます。

①絵付け

電気炉を使い、600度ほどで焼き付ける。窯に入れて4時間かけて焼成、冷ますのに8~15時間ほどかかる。

顔料はデリケートなものもあるため、色や顔料の種類別に複数回にわけて焼成することもある。

グリザイユ

酸化鉄が原料の顔料。黒・茶・白・青・緑などあるが、いずれも不透明の濃色。

最もベーシックな顔料で、安価。透過光がないと模様が見えない。

シルバーステイン

銀が入った顔料で、ガラスを黄色に染めることができる。銀が材料なため高価。(量にもよるが+500円~)

塗った側に青いラスター模様が出ることがあるため、ピース裏面に施すことが多い。

←青ガラスと黄色(オレンジ)の境目にある、青白いのがラスター模様。

エナメル

ガラスに焼き付けられる色つきの顔料。赤・ピンク・緑・青など様々な色があるが、混色は基本不可。

濃く塗ったとしてもシルバーステインや色ガラスのようには発色しない。また、グリザイユやシルバーステインに比べると耐久性は低い。(制作で使う薬品で剥がれてしまうこともある)

シルバーステインと同じかそれ以上に高価(特に赤・紫・ピンク)

 

 

②削る

削る=ガラスに傷をつけることで、光の反射が変わり模様が見える。焼成がないため、その日のうちにピースを使える。

ガラスの色にもよるが、白く光るように模様が見える。透過光でも反射光でも模様が見えやすく、絵付けより軽やかな印象の仕上がりとなる。

被せガラス(※後述)を使えば、1枚の2色使って模様を作れる。

サンドブラスト

消灯(裏面にサンドブラストあり)
点灯

研磨用の砂を高圧で吹き付けて、ガラス表面を彫って装飾すること。

※当工房に機械がないため、+3,000円~でレンタルして作業する必要あり。

彫った部分はすりガラス状になるため、向こうの景色は見えなくなり、光を柔らかく通す。

段彫り(絵柄の奥行に合わせて彫る深さを変える)で立体的な模様を作ったり、ぼかしを入れて雲のような柔らかい模様を作ることもできる(ただし、どちらも難易度高め)

 

ハンドルーター

ダイヤモンド製の削り器具をペンのように持って線で模様を彫る(面を削るのは難しい)。

頑張れば穴あけも可能。

 

 

③溶かす

ガラスを溶かして湾曲させたり、合体させることをフュージングと呼ぶ。4時間焼成→冷ましに10~20時間かかる。

ただし焼けるガラスと焼けないガラスがあり、また、基本は同じメーカーのガラス同士でしか合体はできない。

色の違うピースを金属を使わずに繋ぐことができるが、ガラス表面はツルっと、裏側はざらざらした質感になる。

フュージング例

 

 

 

ガラスの種類

ステンドグラスに使う板ガラスは、次の2種類に分けられます。

  • アンティークガラス
  • マシンメイド

基本、日本国内では製造されておらず、その多くは欧米から輸入しています。

いずれのガラスにも共通するのは、ピンク・赤のガラスは高価という点です。これは製造に金を使用するためで、他の色の2~3倍します。

 

アンティークガラス

メーカー名:ランバーツ、サンゴバン、フリモント

相場:1坪(30×30cm)で5000~15000円

職人が1つ1つ吹いて制作する板ガラスをアンティークガラスと呼びます。

「アンティーク」というと古いガラスとイメージしてしまいますが、「昔ながらの製法で作られている」というだけで現代に作られているガラスです。世界でも3社ほどしか製造していません。

機械で作るガラスは鉄板の上で伸ばされたりするのに対し、吹いて作るアンティークガラスはガラス表面がどこにも触れずに制作されるので、ガラス全面が火の熱で磨かれ、艶やかな質感を生み出します。

アンティークガラス最大の魅力は、心地よい歪みが生み出す、ガラス自体の表情豊かさ。

製造の際に意図的につけられるガラス表面の筋(=ストライエーション)や気泡は、光を乱反射させ、まるでカットされた宝石のような輝きを放ちます。

色数も多く、発色・透明性も極めて高い最高級のガラスで、ヨーロッパの大聖堂に入っているのもほとんどこのアンティークガラスです。

絵付けを施される前提で製造されているため、電気炉で焼成しても変色・失透はほぼ起こりませんが、フュージング(溶かして変形・合体させる)のはほぼできません。

 

被せガラス(きせがらす)

1枚のピースで2色の表現をしたい場合は、アンティークガラスのなかでも「被せガラス」と呼ばれる2~3層構造の特殊なガラスを使う必要があります。マシンメイドの被せガラスはありません。

 

マシンメイドガラス

メーカー名:ヤカゲニ―、ココモ、OGT、ブルズアイ、ウィスマーク、オセアナ、etc…

相場:1坪(30×30cm)で1000~15,000円

マシンメイドのガラスは、水あめ状のガラスを鉄板の上でロールして制作されており、メーカーによって質感・色味も全然違います。

アンティークガラスよりは安価ですが、物によってはアンティークより高価なものもあります。マシンメイドにはアンティークにない面白いテクスチャや模様があり、決して劣ったものというわけではありません。

特にアンティークだと透明度が高すぎて眩しい際は、ざらざらしたマシンメイドのテクスチャが活躍します。

ザラザラしたテクスチャのマシンメイドガラス
オパールセントガラス

マシンメイドの中でも、乳白色で半透明なガラスをオパールセントガラスと呼びます。不透明・半透明なガラスは反射光でも色味がわかるので、ランプを作る際はこのオパールセントガラスがよく使われます。

オパールセントガラスの中には焼成すると変色・失透するものもあります。

詳しくはこちらのサイトの記事が充実しています。 →ガラスのテクスチャ色々【表面の感じ】

金属(鉛)部分の仕上げ

鉛は制作の最後にパティーナという染料で染めることができます。黒か赤茶色を選べます。

パティーナをかけず、はんだそのままの色(シルバー)も可能ですが、パティーナを書けるほうが腐食(経年変化)に強いです。

赤茶色のパティーナで仕上げたハンダ

制作手順

デザイン・製図

どこに置いてどう使うのかイメージを膨らませ、ラフでいいのでデザインを描いてみます。

それぞれの図案をどの技法で表現するのか(絵付け?サンドブラスト?等)決めます。

どのようにピースを分割するか決めます。

1mm以下の細いペンで正確に製図します。

ガラス選び
 

ピースごとに、どのガラスを使うか選びます。

 

ガラスカット
 

カット出来たら、ルーターで削って型紙とぴったりになるまで整えます。(ズレは1㎜以下に)

 

 

サンドブラスト
 

サンドブラストする場合は絵付けより先に行います。

 

 

絵付け
 

グリザイユ→シルバーステイン→エナメル寒色系→エナメル暖色系の順に焼成します。

 

 

コパーテープを巻く(ケイム式の場合はスキップ)
 

すべてのピースにコパーテープを巻きます。

ただし、銅は酸化するとハンダが乗りづらいので、はんだ付けをする直前~数日前までが望ましい。

 

 

組み上げ(はんだづけ)
 

一か所を執拗に作業すると、ガラスが熱割れを起こすので注意する。

 

 

洗浄~仕上げ
 

はんだ付けで使用した薬品の成分が残っていると、腐食(経年変化)が起こりやすいので、しっかりと洗浄する。ケイム式の場合はケイムとガラスの隙間にパテを詰める。

パティーナ仕上げをする場合は、洗浄前に軽く作品を拭いて染める。

最後にピカール(金属磨き)ではんだ部分を磨いて、ガラス表面の汚れや指紋を拭う。

 

 

 

デザインのコツ

色は3色に絞る。

ステンドグラスというのは大変主張の強い美術工芸で、イラストや他の工芸では同じ配色で素敵でも、ステンドグラスにするとうるさい印象になることは少なくありません。

構造上、すべてのピース・色が最低でも3㎜はある真っ黒な線(はんだのライン)で囲われるため、1つ1つの主張が強力なのです。

主役となる色・モチーフを決めたら、残りは味薄めにするのがコツです。

また、濃い色は、実際より小さく、色も暗く見えるので気持ち大きめにデザインを整えましょう。

ピースはなるべくシンプルな形にして、モチーフは絵付け等で表現する。

ピースが多い・複雑であればあるほど、制作の難易度は上がり、時間もかかります。

ティファニーランプのように細かくピース分けする方法もありますが、絵付け等の工夫で少ないピースでモチーフを表現することも可能です。

細かくピース分割せず、絵付けでモチーフを表現する
ティファニーランプ

 

費用について

材料費(例:15×15cmの4面ランプ)

・デザインにもよるがハンダを5~15本は使用する。はんだは時価のため変動がありますが、だいたい1本200円前後です。

コパーテープは1巻きを貸し出し、使用後に重量を図って消費量に基づいて計算します。1巻きが約1500~1800円。テープの幅にもよりますが、未使用品が58~70グラムですので、1グラム25円(1mで3グラムほどあります)で計算しております。

・ガラスは作りたいピースが取れる最小サイズにカットしてお渡ししますので、1坪単位で購入する必要はありません。ただし当工房のガラスには価格は書いてないため、価格は都度確認となります。端材ボックスから選んでいただければ2~4割値下げします。

ガラスはかなり贅沢に選んでも10000~15000円程度。セール品(在庫が多い物)・マシンメイドを上手く使えば5000~1万円も十分可能です。

・置き型ランプの場合、ランプベースを使うか、シェード中に電球を入れ込むベースなしタイプがあります。ベース相場は4000円~30000円と幅広いですが、当工房では1万円前後のコスパのいいモデルをおすすめしています。

・吊り下げランプの場合、取り付け金具は5000円前後です。事前にお伝えいただければコードの長さも変えられます。

・サンドブラスト用のマスクシートはA4サイズ1枚で220円です。

薬品、絵付け顔料は基本無料です。シルバーステインは焼成にかかる追加コスト500円を負担いただきます。

制作費

1日(8時間)11,000円、4時間6,000円です。完全マンツーマン指導です。おひとりで進められる場合は、近くで別作業をすることもありますが、それを加味しての金額ですのでご了承ください。もちろん気になることがあれば遠慮なくお呼びくださいませ。

ガラスカット・はんだ付けでは、作業の一部をお手伝い・代行することも可能です。(絵付けは代行不可)

スケジュール

デザイン・個人差にもよりますが、スムーズに進んでも下記が最短とお考えください。

  • 基礎座学、デザイン相談、カットの練習・・・1日
  • ガラス選び、ガラスカット、ルーターで形を整える・・・1~2日
  • サンドブラスト、絵付け・・・数時間~1日※
  • 組み上げ~仕上げ・・・1日

※絵付けは技法上、1回で焼ききれないこともあるため、別日に数時間追加で作業します。

※サンドブラストはレンタル費用として別途3000円~かかります。

 

1人で家で進められる作業は、持ち帰って作業していただきます。不明点はいつでもラインでお問い合わせ可能です。

例:デザインや製図。コパーテープを巻く作業。絵付けも顔料と道具を貸し出し可能(貸出不可のものもあります)

道具はすべてこちらで用意しますので購入する必要はありません。

ただ、摩耗する道具もありますので、利用料として最初に2000円だけ頂戴いたします。

ワークショップ規定

▼下記、ご了承いただける方のみ受け付けております。

・著作権のあるもの(二次創作のデザイン)の作品の販売は、固く禁じます。ご自分で使う、無償で譲るなど個人使用の範囲であれば問題ありません。

・制作風景を撮影し、当工房のSNSにアップいたします。(顔は隠します)

・お支払いは基本、現金のみ。当日中にお支払いいただきます。

制作途中の作品の保管期間は3か月です。当方の都合で制作期間が延びた場合を除き、3か月を超えたものはこちらで処分(廃棄、リサイクル)いたします。

・デザインの著作権は当工房に帰属します。

メリハリをしっかりつけて、無駄なお金は使わず、かけるとこにはお金をかけて制作していきましょう!

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